【和訳&解説】Beyoncé, Linda Martell & Shaboozey - SPAGHETTII
【当ブログではアフィリエイト広告を利用しています】
Genres are a funny little concept, aren't they?
Yes, they are
That Beyoncé Virgo shit
In theory, they have a simple definition that's easy to understand
But in practice, well, some may feel confined
I swear 'fore God, it's 'bout to hit it
Jeeze, oh, ah
Right, right, ah, oh
ジャンル それはおかしな概念よね そう思わない?
ええ 実にその通り(1)
理屈で言えば 簡単に理解できるような定義付けが必要
でも実際は そうね それが窮屈だと感じる人もいるんじゃないかな
I ain't in no gang, but I got shooters and I bang-bang (Goddamn)
At the snap of my fingers, I'm Thanos, da-na, da-na
And I'm still on your head, cornrows, da-na, da-na
They call me the captain, the catwalk assassin (Come on)
When they know it's slappin', then here come the yappin'
All of this snitchin', and all of this bitchin'
Just a fishin' expedition, dumb admission
In the kitchen, cookin' up them chickens
Extra leg, but I ain't even tryna kick it
Cunty, country, petty, petty, petty
All the same to me, Plain Jane, spaghetti
No sauce, no sauce (No), too soft, too soft (Uh)
They salty, they shootin', like Curry (One, two, three)
One hand on my holster, then pass it to Hova
Thought it was sweet when they was walkin'
In the backdoor of the kitchen past the dirty dishes
Now we on a mission, tried to turn me to the opposition
I'm appalled 'bout the proposition
Y'all been played by the plagiaristic, ain't gon' give no clout addiction my attention
I ain't no regular singer, now come get everythin' you came for
私はギャングの一味じゃない けど銃は持ってるの だからバン、バン
指をパチンとひとつ鳴らせば 私はサノス(2)
それでも私は あなたの頭から離れない コーンロウみたいに(3)
人々は私をキャプテンと呼び 私はキャットウォークで悩殺する(4)
神曲だと分かった瞬間 奴らはキャンキャン吠え立てる(5)
あらゆるチクリも あらゆる文句も(6)
探り出しの尋問に過ぎない 馬鹿らしい自白を引き出すための(7)
だから私はキッチンに立って チキンどもを料理する(8)
追加の足も 途中で蹴ったりしない(9)
カンティー カントリー ペティ、ペティ、ペティ(10)
どれも私にとっちゃ変わらない 平凡すぎる(11) スパゲッティ
ソースもない 刺激もない コシがない 柔すぎる(12)
怒りに任せて シュートを決める カリーのように(13)
ホルスターに片手を突っ込んで ホバーへとパスを回す(14)
スウィートだなって思った 彼らが歩いていく場面
キッチンの裏口から 汚れた皿の間を通り抜けて(15)
今の私たちには任務があるの 私を敵に回そうとした
その提案には愕然とする(16)
みんな偽物に踊らされてる 影響力中毒には興味もない(17)
私は普通の歌い手じゃないんだよ なんだって差し出すから取りに来て(18)
I ain't in no gang, but I got shooters and I bang-bang
(They still love your flame, ain't no game or I'll pierce your heart)
I ain't in no gang, but I got shooters and I bang-bang
(Bang, bang, bang, bang, bang)
Come get everythin' you came for
私はギャングの一味じゃない けど銃は持ってるの だからバン、バン
(それでも あなたの炎にみんな夢中 本気だよ それともあなたのハートを射抜こうか)
私はギャングの一味じゃない けど銃は持ってるの だからバン、バン
(バン、バン、バン、バン、バン)
お目当てのものを取りに来なよ
Ayy, howl to the moon (Howl to the moon)
Howl to the moon
Outlaws with me, they gon' shoot
Keep the code, break the rules (Break the rules)
We gon' ride for every member that we lose
Someone here brought fire, ain't no tellin' who (Oh)
Play it cool
Know the lawman watchin' me every time I move (Move)
Bounty on my head, can't go west, they on my shoes
No matter what the charges is, we ain't gon' tell the truth
月に向かって吠えろ
俺と無法者たちに あいつらは銃口を向ける
規約は守り 規則は破る
失った仲間たち ひとりひとりのために 全速力で駆ける(19)
ここにいる誰かが火を持ち込んだ でも誰かは絶対に吐かない
冷静に振舞え
法の執行人が一挙手一投足を見張ってるぞ
俺の首には懸賞金 西へも逃げられない 足を踏まれて動けない
容疑が何であれ 俺たちの口から真実は語られない
Beyoncé, Linda Martell & Shaboozey – SPAGHETTII Lyrics | Genius Lyrics
(1)カントリー音楽の分野で最初に商業的な成功を収めた黒人女性アーティスト、リンダ・マーテルのモノローグで幕開ける本楽曲『SPAGHETTII』。この曲のタイトルである「スパゲッティ」は、西部劇のジャンルのひとつである「スパゲッティ・ウエスタン」(日本では「マカロニ・ウエスタン」という和製英語でも呼ばれます)のことを指していると思われます。
スパゲッティ・ウエスタンというのは、アメリカの王道の西部劇を参考に、主にイタリアで製作され、枝分かれ的に発展した西部劇のジャンルことで、1960年代~1970年代にかけて最盛期を迎え多くの作品が生み出されました。スパゲッティ・ウエスタンは娯楽芸術としての側面が大きく、本場アメリカの西部劇のストーリーにおける歴史的背景やジャンル的慣習を半ば無視し、正統派から逸れたと言える作風は、一部で批判的な意見も聞かれるものの(そもそも「スパゲッティ」というのは、イタリア=スパゲッティだろう、という当時の安直で固定的な概念から名づけられたもので、少々軽蔑的な意味合いも含みます)それでも商業的には成功を収め、世界中で人気となり今では映画のいちジャンルとなるほどまでに築き上げられました。
アルバム『COWBOY CARTER』リリース前のインスタグラムの投稿の中で、ビヨンセが「このアルバムはカントリーアルバムではありません。ビヨンセのアルバムなのです」と語っていたように、カントリーに留まらず、R&Bやフォーク、ロック、ゴスペルなど多くの音楽ジャンルをミックスさせ、もはやジャンルという概念を取っ払いビヨンセ流の唯一無二のサウンドが作り上げられている本アルバム。その中でも異彩を放っているトラックが、ヒップホップにまでジャンルの裾野を広げ、トラップのビートをベースにビヨンセがラップを披露した、『COWBOY CARTER』のジャンルの多様性がもっとも顕著な形で表されているとも言える本楽曲。
一部では「邪道」だとも批判されるスパゲッティ・ウエスタンとかけて、メジャーや王道と言われるやり方でなくとも、人々の心を捉えるような素晴らしい芸術作品を作ることができる、そんなビヨンセの主張を感じさせるタイトルとなっています。
また、本楽曲でサンプリングされているのは、DJ Mandrakeというブラジルのアーティストの『Aquecimento das danadas』という楽曲。その楽曲はジャンルで言えば「ブラジリアンファンク」と位置付けられ、本楽曲『SPAGHETTII』のイントロでシャブージーがアーティスト(ビヨンセ)の名前と短いラインを独特の英語のイントネーションでシャウトしているのは、ブラジリアンファンクの音楽においてよく用いられる演出にオマージュを捧げたものなんだそう。
(2)映画『アベンジャーズ』シリーズに出てくる最強の敵、指を鳴らすことで世界の人口の半分を消し去ったのが、サノス。
(3)「コーンロウ」はアフリカの伝統的なヘアスタイルであり、細い三つ編みが頭皮にぴったりと付けるように編まれることから、ビヨンセの存在が人々の頭にぴったりとくっついて離れない(ビヨンセは無視したくてもできない存在である)ことを表現した例えだと捉えられます。
(4)元々は「(人を)殺める」という意味の「slay」という単語は、「イケてる」といった意味のスラングとしてSNS上などでよく使われています。よって「キャットウォークの暗殺者」という表現は「抜群のスタイルでランウェイを歩く人(ビヨンセ)」のこと。『RENAISSANCE』を引っ提げたワールドツアーでも、ランウェイのようなステージをハイブランドのクチュール衣装に身を包んだビヨンセが闊歩していました。また「キャプテン」は、ビヨンセが音楽界の「クイーン(女王)」である、という意味です。
(5)「slapping」は、音楽や食べ物が「最高」だったり「イケてる」ときに使われるスラング。また「yapping」というのは、ここ1年ほどの間にTikTokを中心としたSNSで流行ったスラングで、「大げさに騒ぎ立てる」といった意味。つまり「ビヨンセが良い曲をリリースすると、ヘイター(アンチ)たちが騒ぎ立てる」という意味の歌詞になります。
(6)ビヨンセに批判的なメディアやアンチファンたちが、ビヨンセに対してネガティブな言葉を投げかける(けど、そんなの気にならない)という意味
(7)ビヨンセがイルミナティ(世界の社会情勢や経済を裏で牛耳っていると都市伝説的に語られている組織)のメンバーであるという根も葉もない噂は、ある種のネタとしてメディアの間で長年ささやかれていて、ビヨンセは2016年の楽曲『Formation』でも、この噂について真実ではないと断言し言及しています。
(8)「チキン」というのは「chickenhead(チキンヘッド)」という、女性を軽蔑的に呼ぶスラングのことだと思われ、また「料理する(cook up)」というのも「(誰かを)笑いものにする、批判をぶつけてきた相手などをジョークで言い負かす」といった意味のSNS上でよく使われるスラングです。
(9)「extra leg」は、ツアーの「追加公演」を指す言葉でもあります。
(10)カンティー(cunty)とは、LGBTQ+コミュニティー、とりわけ有色人種のLGBTQ+の人々を中心に、1960~1980年代までにかけてのニューヨークで全盛期を迎えた「ボールルームカルチャー」から発生したスラングで、女性らしさや華やかさ、ファッショナブルさを褒め称える最上級の言葉として現代でもSNS上などで使われています。
ここで言う「カンティー」とは、ボールルームカルチャーやLGBTQ+の先駆者たちにオマージュが捧げられた前作『RENAISSANCE』のことを指していると思われ、「カントリー」は今作の『COWBOY CARTER』を指し、よって「卑しい(人)」を意味する「ぺティ」は、その単語が3回繰り返されていることから考えても、次作のアルバム(アクト3)を象徴するようなキーワード、もしくは次作のヒントとなるような言葉なのではないか、とも推測されています。
(11)Plain Janeは、平凡で特に突出した魅力のない女性を指す言葉
(12)「ソース(刺激、面白み)がない、柔(やわ)すぎる」というのは、伝統や慣習、またジャンルの枠にとらわれリスクを冒すことを恐れる保守的な音楽(主にカントリー音楽がそうであると言われるように)に言及した歌詞であると考えられます。
(13)カリーは、バスケのNBAで史上最高の選手のひとりに数えられるステフィン・カリーのこと
(14)Hova(ホバー)は、ビヨンセの夫ジェイ・Zのニックネーム
(15)マーティン・スコセッシ監督の1990年の映画『グッドフェローズ』の劇中に登場する、主人公が恋人を連れてナイトクラブの裏口から入り、キッチンと長い廊下を抜けてテーブルに着くまでをワンカットで映した、有名な3分半の長回しシーンに言及したと思われる歌詞。このシーンは、あらゆる映画コラムサイトなどによって「映画の歴史上最高の長回しシーン」のひとつに数えられ、映画ファンから広く愛される伝説的なシーンとなっています。
(16)ビヨンセが『RENAISSANCE』収録の『ENERGY』で、歌手のケリスの楽曲『Milkshake』をサンプリングした際、曲のクレジット記載に関してケリスがビヨンセをSNSで批判し、その後サンプリングの部分は曲から削除されました。この部分のリリックは、その騒動に言及したものだと解釈されています。
(17)「clout」というのは、インターネット上などでの「影響力」を指す単語。「影響力中毒」という表現は、SNSなどでの自身の発言やコンテンツに対する人々の反応に執着し、いいねや拡散されることに中毒になっている状態を意味します。
(18)R&B、ポップ、ラップ、カントリー...と、今やジャンルの域、また「標準」といった枠組みにとらわれないアーティスト性で人々を魅了するビヨンセ。そのライブに来れば「何だって聴かせてあげる」と歌われた歌詞
(19)ride for ~(ride or die for ~)=困難な状況の中でも、~のために立ち上がる、~を守る、といった意味のスラング。西部劇やカウボーイがテーマとなった本楽曲では「馬に乗る」といった意味ともかけられていると考えられます。
『COWBOY CARTER』を全曲【和訳&解説】